新高山百合
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戦時中に会った悪い教師と純粋な将校(下)
2010-11-22 Mon 17:57

これは郭振純先輩のインタビュー「戦時中に会った悪い教師と純粋な将校(上)」の続き(後編)です。


二人の若武者を見送った僕は校庭の鳳凰木の木蔭に独り坐って、澄み切った青空を眺めながら、今先の侮辱を思い出して頬が熱くなって来るのを感じた。そして優しい母の顔が走馬燈のように青空を横切った。続いて退学処分に遭った後に起こる様々な假想に思路が閉ざされてぽかんとなった。

牧野少尉の胸を張って「がんばれ!」の掛け声が鼓膜を震わせて僕を呼び醒ました。

この侮りを雪ぐべく全身の血が沸き立って、決然と「構うもんか!」と叫んで弾くように立ち上がり、チビッチョの官舎へ向けて足を大きく踏み出した。

空地を利用して作物を作る風気に乗って、秋山先生が寮生を動員して作った水田の畦に立って、出始めた稲の穂波に見とれていた所へ、僕が背後から「先生」と呼び掛けると、先生は一寸びっくりしたように後を振り向いた。
僕だと分かると、「何だネグロ」と忌々しく怒鳴った。
「ネグロではありません。郭振純です!」

流石に剣道三段の彼は僕の声色で内心を読み取ったらしく、
「生意気言うな!生蕃!」と叫びつつ、畦から僕の面前に近づいて来た。
「先生でも生徒の親を侮辱する権利はありません。僕の体内に豚の血が流れているとは持っての外です!」
「黙れ!こん畜生!」と叫ぶや拳を僕の顔目掛けて振った。
それを僕が素早く交わしたのに、狂犬さながらに、いきり立った彼は、すかさずに我が胸を直突した。

顔への一撃をかわした瞬間、僕の服従心の慣性が反射的に働いて、折角の勇気をたじろがした。この一瞬の躊躇が禍してチビッチョの直突を受けてよろめき左足を背後の水路にとられて、仰向けに倒れた。その拍子に無意識に伸ばした両腕が相手の襟を掴み、同時に屈した右足をその下腹に当てて、猛然と突き放したら、その短躯は僕の頭上で抛物線を描いて田圃の中に落ち込んだ。

彼は自悦する田圃に等身大の凹みを作ったのだ。威厳のシンボルである真っ白い官服は泥に塗れ、その様は溝に嵌った、哀れっぽい犬そのものだった。

僕が身を起こすと、前方の柑桔園から田中先生と池田教官が三八式歩兵銃を腕に、微笑んで僕に早く行け!と手で合図していた。

自分が無中でやらかした事に不安を感じたが、すぐ冷静に返り、舎監の小柳先生へ事の経過を報告に行って処分を待った。

些かの悔いも感じないばかりか、淡然として今先、当初の我が意のままに事を成しとげた快感に浸った。

翌日は禁足を命ぜられて寮舎で処分を待った。午後になって小柳先生の奥様が見えて、教務会議の様子を知らせてくれた。

「秋山先生が退学させるべきだと堅く主張したが、小柳先生と振純さんの級主任が秋山先生の暴言を詰責、一方では、池田教官と田中先生の証言であなたの行為は暴行でない事になったので、校長先生は禁足一ヶ月の裁決を下された。そして、校内で『チャンコロ』、『生蕃』の使用を禁止した。振純さん、あなた勝ったのよ! そうそう、良い話を一つ言い忘れたわ。会議散会の時、田中先生が大声で木島師範に『先生、良い弟子を育てましたね』と仰ったら、木島師範は『郭振純は学以致用、無条件で初段に進級』と答えられたとのことです。禁足処分が明けたら、赤飯を作って上げるわ。そして黒帯をお祝いに!」と奥様はつけたした。



『戦時中に会った悪い教師と純粋な将校(上)』
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